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警察が人身事故にしたがらない理由

[記事公開日]2010/11/22
[最終更新日]

交通事故が発生すると、その場で警察に電話(110番)をかける事になると思います。(法律上の交通事故報告義務がある)すると110番では「その場を離れずに。警察官が向かいます(負傷者の有無の確認もあります)」と説明されます。しばらくすると、警察官が事故現場に到着します。

*事故発生後直ちに行うのは人命救助であって、けが人がいる場合はそれを放置して110番をしてはいけません。負傷者の救護が最優先です。

警察官が現場に到着すると、事故による負傷者がいない場合は物件事故として処理をします。負傷者がいる場合は人身事故として処理をします。しかし、当事者が軽症の場合に「人身事故にする場合は診断書をもらい届け出てください」「けが人がいないようなので人身事故にしません。何かあれば診断書を提出してください。」と言う場合があります。これは「現時点では人身事故にはせず物件事故として処理をします。人身事故に切り替えるときは診断書が必要ですが、どうするかは負傷者の判断です。」という意味です。

警察が人身事故に

警察官が人身事故にしない?

警察官は当事者が救急搬送されないと、その事故を「人身事故」にせず「物件事故」として処理を行いたがります。極端な話だと、警察官が被害者に対して「相手が悪いようにするから、人身事故にしなくてもよいか?」といってくる時すらあります。(もっとも近年ではこういった対応はかなり減ってきているようです。)

人身事故の定義は、警察が医師の診断を確認することです。つまり当事者が警察に診断書を提出する事です。つまり、軽微な人身損害が伴う交通事故であれば、被害者が警察に診断書を提出しなければ、交通事故が人身事故として処理されることは無いという事にもなります。(関連URL→人身事故とは?

おおよそ事故から2週間くらいすると、警察官は被害者が持ってくる診断書の受け取りを拒否してくることが多かったのも昨今、警察による診断書の受取がスムーズになってきています。*そもそも警察には受理義務というものがあります。

しかし、なぜそこまでして、警察は交通事故を人身事故にしたがらないのでしょうか?

それは簡単に言えば手続きが面倒だからです。

他にイレギュラーな理由として被害者らに何らかの問題があると疑われるときも人身事故にしません。(場合によっては事故として処理しない場合もあります)たとえば、同一人物が連続して似たような事故に遭遇した場合が明らかで不自然なときなどです。

警察が人身事故にする手続き

警察が交通事故を人身事故として処理する場合には、実況見分を行ってきちんとした書類を作成しなければならない事になっています。その人身事故のために警察が作成(用意)する書類は次にあげるとおりです。

1、送致書
2、実況見分調書
3、被害者調書
4、参考人調書
5、被疑者調書
6、診断書

これは人身事故の月間の交通事故処理が何十件もある担当警察官にとってはかなりの手間と時間がかかるので、「できることなら人身事故は避けたい」と考えているのです。

この関連で一番多い交通事故相談は、「人身事故でなくては、自賠責保険の支払いは受けられないのか?」といった疑問です。

人身事故・物損扱いと自動車保険

物損事故だと治療費などの人身損害の賠償が受けられない、保険会社が対応をしてくれないなどの心配は無用です。

警察が診断書を受け取らず人身事故への切り替えを拒否したという事実を人身事故証明書入手不能理由書に記載して、「この交通事故は事故証明書上で物件事故となっていますが本当は人身事故なのです」という説明を行うと自賠責の適用事故という事になります。任意保険については事故の事実と負傷者がいれば人身事故如何は問題になりません。

ただし、時として関係者から「どうして物件事故なのか?」と問われる場合もあります。

また、人身事故とすると加害者は処分されてしまうので、「慰謝料を10万円上乗せするから人身事故にしないでくれ」などと診断書を警察に届けないようにお願いをしてくる加害者もいるようです。

警察提出用の診断書代

警察に提出する診断書代金は5500円が相場です。この費用は被害者が受け取る際に自費で支払い自己負担となることが殆どでした。訴訟上で請求すると損害として認められており、損害賠償として加害者に請求できるが保険会社が認めないという奇妙な構図が続いていました。

しかし、運用が変わり、警察用診断書も立替費用として保険会社から支払いを受けることができるようになました。そして警察用診断書の費用を病院が治療費と一緒に保険会社へ直接請求することができるようにもなり、窓口負担も必要無くなりました。

ただ、病院が警察用診断書が保険会社に請求できることを知らずに、窓口負担を求められることが有ります。そういったときは「警察用診断書も一括対応の範囲」である旨を説明するのが良いです。

注意点は、保険会社が病院に「治療費は当社まで請求してください」と一括の電話連絡を行っていない場合は、窓口で警察用診断書(文書代)はもとより治療費も支払う必要があります。事故後に救急搬送された場合はこの連絡が行えないことが殆どですが、この事故直後の治療費(特に救急搬送で入院とならない場合)の支払に関しては、その病院の対応次第で変わります。

人身事故の被害者になったら

人身事故の被害者となったら、如何にして自らの損害を最小限にとどめるかを考えます。この損害というのは、賠償されるであろう損害はもとより、金銭で補償されない被害者の時間や、独特な痛みや精神的苦痛、過失事案では治療費や休業損害なども含めて広く考えます。

最終的にこの自らの損害を最小限にとどめるには、損害のすべてを金銭賠償していただくという事になります。(金銭賠償をもって損害は補填された考え)

これは交通事故の100%被害者(無過失)であっても常に考えておかなければなりません。

*最小限にとどめるとは、我慢することではなく、無意味やたらに損害を増やさない、賠償されるように立証の準備手間を惜しまないという意味です。

*常にというのは交通事故受傷直後からという意味です。なぜなら、時間が経つと立証が出来なくなり金銭賠償されないものがあるからです。

特に注意すべき損害には、交通事故の中では最も重要な問題の一つである後遺症というものがあります。後遺症は人身事故に関わる方全員、一度はそのシステムについて学んでおくべきことです。なぜなら、賠償金額の大変を占めると言っても過言ではなく、また制度的に必ずしも賠償されるとは限らないからです。

人身事故扱いの被害者のデメリット

ご参考までに、人身事故にする場合の被害者にとってのデメリットは、「人身事故のために必要となった時間と費用」です。

実況見分の立ち合いや警察に診断書を提出する時間が必要になります。

そして被害者とはいえども、事故発生の原因になるような落ち度があれば人身事故の当事者として処罰の対象となる事があるので注意が必要です。つまり、怪我人(自ら)が出た交通事故その当事者(自ら)として処罰される)

なお、人身事故とするために必要な交通費等の費用については、保険会社はその支払いを拒否するのが一般的です。ただ、人身事故とする場合の費用の中でも警察提出用診断書だけは賠償の対象とする取り扱いが明確になっています。

警察提出用の診断書の費用

先に説明した通りですが、かつて警察に提出する診断書の費用は被害者の負担でした。しかし、裁判上は損害賠償金として認められていることもあってか、自賠責でも警察用診断書代を認定するようになりました。そのためか、被害者が窓口で支払っていた警察用診断書代については、病院から直接保険会社に「警察用診断書」として請求することが一般的になっています。

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