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04,轢き逃げは罪が重い! 〜報告義務違反と救護義務違反〜


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判例要旨

轢き逃げを行ったときには、道路交通法七二条一項後段の報告義務違反と前段の救護義務違反の各罪が成立し、併合罪として成立する。

昭和三八年四月一七日 最高裁判所大法廷

理由
 

 

仙台高等検察庁検事長橋本乾三の上告趣意について。

 原判決は、本件公訴事実中、「被告人が自動車を運転して公訴事実第一のとおり交通事故を起したにもかかわらず、右交通事故発生の日時、場所等法令に定められた事項を警察官に報告しなかつた。」との点について、該公訴事実の存在することを認定しながら、道路交通法七二条一項後段の報告義務は、同条項前段の救護等の義務に対し、単に補充的意義を有するに過ぎず、両者は別個独自の義務として互いに並立するものではないとし、本件のようないわゆる「ひき逃げ」の場合には、救護等の義務違反の罪のみが成立し、報告義務違反の罪は成立しないとして、この点につき無罪の言渡をしたこと、及び同判決が、いわゆる「ひき逃げ」の場合に、右両義務の違反が成立するとした論旨引用の高松高等裁判所の判例と相反する判断をしたものであることは、所論のとおりである。轢き逃げの場合には救護義務違反罪のみが成立し、交通事故の報告義務違反罪は成立しないとしたが如何?
 

よつて、審案するに、道路交通法は、道路における危険の防止と交通の安全、円滑を図ることを目的とするものであり、右目的達成のため、同法七二条は、その一項前段において、車両等の交通による人の死傷又は物の損壊の交通事故のあつたときの措置として、「当該車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と規定し、その後段において、「この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。)は……警察官……に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」と規定している。右規定の趣旨を前記道路交通法の目的に照らして考えると、同条項前段は、交通事故があつた場合、事故発生に関係ある運転 者等に対し、先ず応急の処置として救護等の措置を執るべきことを命じ、その後段は、この場合、すなわち、右前段にいう交通事故があつた場合において、人身の保護と交通の取締の債務を負う警察官をして、負傷者に対する万全の救護と交通秩序の回復に即時適切な処置を執らしめんがため、運転者に右のような報告義務を課したものであつて、両者は、その窮極の目的を一にしながらも、その義務の内容を異にし、運転者等に対し各別個独立の義務を定めたものと解するのを相当とする。これがため、各義務違反に対する罰条も、前者に対しては司法一一七条、後者に対しては同法一一九条一項一〇号と各別に規定しているのであつて、要するに、交通事故があつたときは、前記運転者等は、救護等の措置と報告の措置の双方について、これが履行を義務づけられ、前者の義務を履行したからといつて、後者の義務を免れないのは勿論、前者の義務の履行を怠つた場合においても、後者の義務を免れず、これを怠るときは当然報告義務違反の罪が成立し、これと救護等の義務違反の罪とは併合罪の関係に立つものと解すべきである。救護義務違反と報告義務違反は結果的には同じ罪なようだけど、法が求めている事が違う以上はあわせて成立する
 

されば、右と同趣旨に出でた所論引用の高松高等裁判所の判例は正当として支持さるべきで、論旨は理由があり、原判決は、刑訴四〇五条三号、四一〇条一項本文により破棄を免れない。
 

よつて、同四一三条但書により被告事件につきさらに判決をすることとする。
 

原判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人の判示所為中、無免許運転の点は、道路交通法六四条、一一八条一項一号、罰金等臨時措置法二条に、業務上過失致死の点は、刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法二条、三条に、救護等の義務違反の点は、道路交通法七二条一項前段、一一七条、罰金等臨時措置法二条に、報告義務違反の点は道路交通法七二条一項後段、二九条一項一〇号、罰金等臨時措置法二条に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、業務上過失致死罪については所定刑中禁錮刑を、その余の罪については所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同法四七条本文、一〇条により最も重い業務上過失致死罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を主文第二項の刑に処し、訴訟費用の負担につき、刑訴一八一条一項本文を適用して主文のとおり判決する。量刑を述べている
 

 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

 検察官 村上朝一公判出席

  昭和三八年四月一七日

     最高裁判所大法廷

         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎

            裁判官    河   村   又   介

            裁判官    入   江   俊   郎

            裁判官    池   田       克

            裁判官    垂   水   克   己

            裁判官    河   村   大   助

            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

            裁判官    奥   野   健   一

            裁判官    石   坂   修   一

            裁判官    山   田   作 之 助

            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

            裁判官    横   田   正   俊

            裁判官    斎   藤   朔   郎

            裁判官    草   鹿   浅 之 介


 

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