人身事故では、ドライバーと共に車の所有者が責任を負うという決まりがあります。(自賠法3条)厳密にいえば「所有者」という言葉を使用するのは誤りで、これには独特な決まりがあります。ここではわかりやすいように「所有者」と表現しています。
自動車損害賠償責任
第3条 事故の為に自動車を運航の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害した時は、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。
しかし、常に車の名義人がその責任を負うとすると、不都合が生じる場合があります。
例えば、車の名義人がローン会社などの場合です。この場合は、ローン会社に責任は生じません。これは、ローン会社が車のローン代金を担保する目的で車輛の名義をローン会社にしているだけであり、社会通念上賠償責任を負わないとするのが妥当であり、裁判例でもそのようになっています。
他には、良くある名義変更をしていない車です。
いわゆる名義貸しの場合や、売り渡し直後でまだ名義変更がされていない場合の車での人身事故は、その名義人に賠償責任は生じないのが原則です。
つまり、車両運行に関係の無い名義人は責任が否定されます。
ただし、買い主がオークションで車を購入後、同車をすぐに第三者に引き渡したところ、6日後に事故を起こした場合に、売主に責任を認めた地裁判決もあります。 この他にも次のような判例があります。
資力不足のCのため、BがAよりローンを組んで車を購入。その後、名義はBのままで、Cに分割払いで売却。その際、Cが支払を終えたら名義をBからCに変更する事と、Cが支払を怠ったときはBが残代金の支払をし同車を引き取る約束をしていた場合に、Cが人身事故を起こした場合には、Bにも責任があるとした判例
償却制度にて、会社からトラックを購入した従業員が、その後も同車で業務を行い、売主の業務に従事していた場合には、降車にも責任があるとして判例
売主から購入した自動車で、売主の製品を運搬しかつ売主の社名が表示されていた自動車で交通事故を起こした事に加え、その運賃で割賦代金を支払っていた場合に、売主の責任を認めた判例