勤務中や通勤等中の交通事故では、労災保険が使用できます。
被害者が労災保険を使用して給付を受けた場合は、後日労災は加害者(加害者の保険会社)に請求を行うので、結局は加害者が賠償金を負担する事になります。
ただし、双方に過失が発生する事故では、労災が給付した金額全てではありません。加害者が負担するのは「加害者の過失分」だけで、残りは労災が負担してくれるので労災を使用する選択になりますが、自賠責上限の120万円で足りると予想される場合には、わざわざ労災の手続きをしなくとも被害者に過失分の負担はありません。(自賠責で重過失減額されない事故に限る)つまりこの場合は、労災を使用しない選択が一般的です。
では、追突事故などで被害者に過失がない無過失事故の場合はどうなのでしょうか。
これは、被害者の自由な選択でどちらでも構いません。なぜならば、労災が支給した金額全てが加害者に請求されるので結局は加害者が全額支払うことになり、また、いずれの場合も被害者にも何ら金額的負担は発生しないからです。(突き詰めていけば、労災の選択となりますが、ここでは自由な選択としておきます)
また、労災には慰謝料という概念がありませんので、交通事故の慰謝料は労災ではなく加害者側から支払われる事になります。
ただし、休業損害や後遺障害が発生した場合はこの考えとは違う考え方になります。
休業損害が発生した場合の補償は、労災から休業補償として6割が支給されます。残りの4割を加害者側が支払うことになります。保険会社に対する休業損害の請求では、しばしばその請求期間がいつまでなのか?という争いが生じます。これに比べると、労災の休業補償は緩やか(ただし、個々の案件によって異なる)です。その緩やかな基準で支払われた期間は、保険会社も合わせて支払ってくる場合が大多数なので、保険会社と休業損害の交渉を行う手間が省けるというメリットも考えれば労災の適用も考えられます。
さらにもう1つ、交通事故で労災を使用すると特別支給金という賃金の2割分が支給されます。これは加害者とは全く関係ない次元にあるものなので、お見舞金と同じ性質で「給料の2割が多くもらえる」という感覚で受け取れるというメリットもあります。
以上、交通事故で労災は使用するべきか?述べましたが、これは一つの考え方で正解ではありません。ただ、一つ言える事で間違いがないのは、迷った時は労災を使用する選択です。これによる実害はないからです。