交通事故の治療期間
交通事故の治療期間は症状が全く無くなるまでではありません。損害損害賠償上で相当と認められる期間が交通事故と因果関係のある治療費、つまり加害者が賠償すべき治療費となります。例え症状が残存していたとしても、治療の期間が妥当であれば治療は打ち切りということになります。但し、正確に表現すると「治療費の内払いが打ち切られる」という状態になります。
治療期間の判断
交通事故の治療期間は、保険会社・医師・被害者が治療を終了と判断した時までとなります。これは実務上の話であり、本来は十分治療したといえる状態でなければならないので主治医が判断するものでなければなりません。しかし、実務では、保険会社が治療の打ち切りを判断する事によって、治療終了とされる事が多いです。
自覚症状のみの頚椎捻挫や腰椎捻挫の場合には、1カ月・3カ月・6カ月が治療打ち切りのタイミングになる事が多いです。
1カ月で治療が打ち切られるのは、よほどの事が無い限り行われませんが、3カ月の打ち切りになる事はあります。これは、医学的に3カ月での「治癒」が70~80%と多い事や症状が極めて軽く軽快している事、物損の損傷程度が極めて軽く体の受けた衝撃が軽いと推測できる場合などに行われます。
半年という治療期間
そして、6カ月での打ち切りは、今や基本と言えるほど多いです。これは、症状固定(後遺症)と言えるのが交通事故後の半年を経過した時点である事を考慮しての事で、1年や2年もの間、通院を継続できるのは極めて稀なケースです。ただし、近年では後遺障害を阻止しようとしているのか、保険会社が5か月で治療を打ち切ってくることが散見します。
ここまでは、自覚症状のみの場合を説明してきましたが、骨折などの他覚的所見がある場合には、この原則には当てはなりません。骨折部位などにもよりますが1年間以上の通院というのも比較的多く見られます。
治療打ち切り対策
保険会社による治療の打ち切りに対抗する絶対的手段はありません。治療の打ち切りを1カ月程度先延ばしする事は、交渉によって比較的簡単にできますが、無期限に伸ばすことはできません。自賠責への被害者請求という方法もありますが、120万円という自賠責の枠が十分に残っている前提でなければならず、あまり現実的ではありません。もしも、治療費の負担について争うのであれば、治療の打ち切りになってしまったあとは、自費で通院をしてから、示談を締結する時に裁判または交通事故紛争処理センターで治療の相当性や妥当性を争い。結論を出さなければなりません。治療の打ち切りの後の治療費の負担を、直接の話し合いで解決させることは極めて難しいです。
治療費の支払いを打ち切りにされてしまったら
1例としては、受傷後3カ月で打ち切りとなってしまった場合には、4か月目からは健康保険を使用して通院をして、症状が残存した場合はしかるべき時期に症状固定として被害者請求で後遺障害の申請をし、等級を獲得してから加害者との交渉をする事という流れがあげられます。後遺障害の等級を獲得する事によって、交通事故の損害賠償金は確定するので、この時点で初めて示談交渉を開始できる事になります。後遺障害の申請をしない場合には、治療を終えた時点で交渉を開始する事になります。
治療終了をするまで、示談締結まで、治療費が最終的に賠償と判断されるかどうかわかりません。これはすでに内払いを受けた治療費についても同じで、治療費を支払った保険会社は「治療費を病院に6か月分支払ったが、事故による通院は3か月が妥当と判断できるので過払いの治療費は慰謝料と相殺します」という主張もできてしまいます。